なぜ「特定施設入居者生活介護」に係る食事の提供が非課税取引とならないのか【20180406】

介護サービスでの食事提供における消費税の課否を再確認 介護保険法の規定により各サービスの課税関係を判断

有料老人ホームで行われる特定施設入居者生活介護での「食事の提供」が非課税取引に当たらない旨を報じたところ( №3491 ・54頁),介護保険法に規定する居宅サービスとして提供するサービスは,特別の居室の提供等,一定のものを除き全て非課税にするとした 消費税法基本通達6-7-2 等を踏まえ,誤りではないかとの問合せを多数いただいた。

しかし,介護サービス関係の消費税の課否は,各サービスを規定した介護保険法等の規定に基づいて判断され,これに基づけば,やはり,この場合の「食事の提供」は非課税取引には当たらないことになる。

介護保険法のどの事業に該当するかで同じサービスでも異なる課税関係

介護サービスの消費税の課税関係で,まず留意したいのが,非課税の対象となる範囲の定め方だ。というのも,非課税の対象範囲を定めた消費税法別表第一第7号イでは,以下を非課税としており,「食事の提供」などの各サービスについて,一律に非課税にするといった定め方はしていない。

介護保険法の規定に基づく

1.居宅介護サービス費の支給に係る居宅サービス

2.施設介護サービス費の支給に係る施設サービス

3.その他これらに類するもの

すなわち,介護保険法の規定に基づく一定のカテゴリーの事業を非課税としており,同じサービスであっても,その事業が介護保険法でどのように規定されているのかによって,課税関係は異なることになるからだ。

例えば,このうちの「2.施設介護サービス費の支給に係る施設サービス」のカテゴリーに該当する事業(介護福祉施設サービス等)では,食事費は,自己選定による特別なものを除き非課税となる。一方で,「1.居宅介護サービス費の支給に係る居宅サービス」や,「3.その他これらに類するもの」のカテゴリーでは,その中のどの事業に該当するかによって,課税か非課税かが異なる。

一定のサービスに該当すれば保険給付の対象か否かは関係なし

このうち,「特定施設入居者生活介護」が含まれるのが,「1.居宅介護サービス費の支給に係る居宅サービス」のカテゴリーだ。

具体的には, 消費税法施行令第14条の2 第1項において,介護保険法第8条第2項から第11項までに規定された下記10種類の「居宅サービス」があげられている。

ただし,特別の居室の提供その他の財務大臣が指定する資産の譲渡等は除かれている(平成12年2月10日大蔵省告示27号)。

① 訪問介護

② 訪問入浴介護

③ 訪問看護

④ 訪問リハビリテーション

⑤ 居宅療養管理指導

⑥ 通所介護

⑦ 通所リハビリテーション

⑧ 短期入所生活介護

⑨ 短期入所療養介護

⑩ 特定施設入居者生活介護

この点,「食事の提供」が非課税となるか否かは,それぞれの「居宅サービス」の内容を規定した介護保険法等で判断することになるが,その前に留意しておきたいのが,これらの「居宅サービス」の範囲だ。

これらの「居宅サービス」を受けた場合,介護保険法の規定に基づき保険者(市区町村)から一定の範囲内で居宅介護サービス費が支給されることになるが,実際に支給(保険給付)される部分以外のサービスも非課税となる。消費税法で規定する「居宅介護サービス費の支給に係る居宅サービス」は,介護保険法の規定に基づき居宅介護サービス費という費用が支給されるものを非課税範囲として示しているのではないからだ。

従って,要介護者等の自己負担となる費用の1割相当部分はもちろん,居宅介護サービス費に係る支給限度額を超えて指定居宅サービス事業者が提供する指定居宅サービスも非課税となる。

また,通所・入所系のサービス(⑥~⑩)に係る「日常生活に要する費用」(後述)は,介護保険法第41条第1項において,保険給付の対象から除かれているが,これも非課税となる。この「日常生活に要する費用」は,通所先又は入所先において,看護・介護サービスの提供と同時にそれらのサービスの一部として事業者側から提供されることが一般に想定されるサービスであって,要介護者等もそのサービスを日常的に受けることを期待していると一般に考えられるものに係る費用であり,当該費用に係るサービスは,「居宅介護サービス費の支給に係る居宅サービス」等の一環として行われるものだからだ( 消基通6-7-2 )。

食事提供は特定施設入居者生活介護の中に含まれないサービス

これを踏まえて,「特定施設入居者生活介護」に「食事の提供」が含まれるかどうかについて考えてみたい。

この点,まず,介護保険法第8条第11項等の規定をみると,「特定施設入居者生活介護」とは,有料老人ホームなどの一定の施設(特定施設)に入所している要介護者に対して行われる,一定の計画に基づいて行われる入浴・排せつ・ 食事等の介護 ,洗濯,掃除等の家事,生活等に関する相談及び助言,その他の特定施設に入居している要介護者に必要な日常生活上の世話,機能訓練及び療養上の世話をいい,「食事等の介護」は含まれているものの,「食事の提供」は含まれていない。

次いで,「日常生活に要する費用」に係るサービスに該当するかどうかだが,介護保険法第42条第1項では,この費用について,「通所介護,通所リハビリテーション,短期入所生活介護,短期入所療養介護及び特定施設入居者生活介護に要した費用については, 食事の提供に要する費用 ,滞在に要する費用その他の日常生活に要する費用として厚生労働省令で定める費用」と規定しており,「食事の提供」に要する費用が含まれている。このため,「食事の提供」は,「特定施設入居者生活介護」に含まれ,非課税取引に該当するとも考えられそうだ。

しかし,この「日常生活に要する費用」については,介護保険法施行規則第61条において,通所・入所系のサービス(⑥~⑩)における対象費用が,下記のように規定されている。

⑥通所介護

⑦通所リハビリテーション

イ  食事の提供に要する費用

ロ おむつ代

ハ その他「通所介護」又は「通所リハビリテーション」において提供される便宜のうち,日常生活においても通常必要となるものに係る費用であって,その利用者に負担させることが適当と認められるもの

⑧短期入所生活介護

⑨短期入所療養介護

イ  食事の提供に要する費用

ロ 滞在に要する費用

ハ 理美容代

ニ その他「短期入所生活介護」又は「短期入所療養介護」において提供される便宜のうち,日常生活においても通常必要となるものに係る費用であって,その利用者に負担させることが適当と認められるもの

⑩特定施設入居者生活介護
イ おむつ代

ロ その他「特定施設入居者生活介護」において提供される便宜のうち,日常生活においても通常必要となるものに係る費用であって,その利用者に負担させることが適当と認められるもの

すなわち,通所・入所系のサービスのうち,通所介護や短期入所生活介護など⑥~⑨の「居宅サービス」については,「日常生活に要する費用」の中に「食事の提供に関する費用」が含まれている。

一方で,⑩特定施設入居者生活介護については,含まれていない。

従って,有料老人ホームで行われる特定施設入居者生活介護における「食事の提供」については,非課税取引に当たらないということなる。

この点,『消費税法基本通達逐条解説』(浜端達也編,一般財団法人大蔵財務協会)の通達6-7-1の解説の参考「介護サービス別消費税の課税関係」では,特定施設入居者生活介護の課税関係を下記のように図示している。

すなわち,「食事の提供」は,日常生活に要する費用(日常生活費)にも含まれておらず,下記の「居宅介護(予防)サービス費の支給に係る居宅サービス」のいずれにも含まれていない。つまり,特定施設入居者生活介護におけるサービスとして,そもそも想定されていないサービスとなる。

なお,図中の網掛け部分は,「居宅介護(予防)サービス費の支給に係る居宅サービス」の中には含まれるものの,「特別の居室の提供その他の財務大臣が指定する資産の譲渡等」に該当するため,課税の対象となる。

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